写真を撮る時にはまずブレないようにした方が良いだろう。
ブレていない写真の方が「ありのままの視界」に近いと私には感じられるし、それを念頭にシャッターを切るのが一種の作法だとも思う。祈りに作法があるのと同じように、スナップにも作法があるほうが身が引き締まる。
森山大道の「アレ・ブレ・ボケ」は、写真表現に新しい扉を開いた。しかし実際には、彼の写真もほとんどはピントが合っているし、ブレてもいない。
ブレた写真を見返して「悪くないな」と思うこともある。歩きながら咄嗟に切った一枚、思わずカメラを傾けた瞬間のカット。それを否定しない。
写真において「ブレ」は、“味”や“演出”になりやすい。それは“良くも悪くも”だろう。少なくとも今の自分はなるべくブレずに撮るという姿勢が世界に対峙する姿勢として自然に感じられる。
その上で、偶然にブレたカットに気に入るものが見つかれば、それはギフトだと思うのがよい。