リコーGRⅢからGRⅣへ──手に入らないならどうする?代わりに選びたいカメラたち

リコーGRⅢからGRⅣへ──手に入らないならどうする?代わりに選びたいカメラたち

9月12日、リコーから GRⅣが発売されました。発表直後から予約が殺到し、すでに品薄状態。SNSでも「届いた!」「予約すら出来ていない」など悲喜交々の声が飛び交っています。

しかし、GRシリーズの真骨頂は「いつでもポケットに入れて、いつでも写真が撮れること」。新型を待っている間、写真を撮らずにいたのでは無為に時間を過ごすことになってしまいます。まずは何より、手に入るカメラで日常を切り取るのが写真家の在り方として正しいでしょう。

そこで今回は、GRⅣを待っていられない人のために、GRⅣの代替機をいくつか挙げていこうと思います。GR III、GR II、そして少し“変化球”な選択肢としてパナソニックの LX100 II。どれもそれぞれに個性があり、ストリートフォトの確かな相棒になってくれるカメラたちです。


GR III/GR IIIx──28mmと40mm、二つのGRの現在地

一つ目はやはり前機種であるGR IIIです。

2019年に登場したこのモデルは、APS-Cセンサーと28mm F2.8のレンズを組み合わせた、「ポケットに入る一眼画質」の完成形として今なお多くのユーザーに愛されています。描写はシャープでありながら素直で、街角の光や人の動き、カフェのコーヒーの湯気までも、端正に切り取ってくれます。手ブレ補正も備わっているのでローライトの撮影にも十分に対応できます。ふと思いついた瞬間に反射的にシャッターを切ることができる、GRシリーズがずっと追い求めてきた「即写性」を、現代的な水準で体現したカメラなのです。

そして、その後に登場したのが GR IIIx。外観はGR IIIとほぼ同じですが、他のGR機種とは異なる40mm相当のレンズを備えています。広角の28mmとは異なる標準域40mmの世界は全く新しい撮影体験を提供してくれます。28mmが「焦点を定めない自然な視界の切り取り」だとすれば、40mmは「ふと目の留まった対象に微かに踏み込んだ視線」です。切り取れる“物語”が変わるのです。

実際に両方を使ってみると、28mmは歩きながらの一瞬を空気ごと残し、光や影、街並みと撮影者の“関係性”をスッと収めてくれる。一方の40mmは、被写体の表情や佇まいを自然な距離感で捉えるのに向いていて、ポートレート的なスナップがぐっとしやすくなる。つまりGR IIIとGR IIIxを持っている時では、世界に対峙する視点を異にすることになるのです。

したがって「GRⅣを手に入れたらGRⅢxが不要になる」ということはありません。40mmでしか撮れない世界が確実にあるからです。両方をポケットに忍ばせ、その時の気分や街の空気に合わせて使っても良いでしょう。これは一眼でレンズを付け替えるのと似ているけれど、もっと軽やかで“決定的”です。

 


GR II——内蔵ストロボが光る、古き良き名機

一方で、前機種であるGRⅢですら入手が難しく、価格も高止まっているという現実もあります。ではGR IIという選択肢は無いのでしょうか。2015年に登場したこの機種は、 GRⅣ、GRⅢと同じAPS-Cセンサーを搭載しつつ、画素数は約1600万画素と控えめです。今となっては少なく感じるかもしれませんが、そのぶんデータが軽く、扱いやすさでは優れています。シャープなレンズの描写と合わせて、PCでの鑑賞やA4、A3サイズ程度までの印刷であれば全く問題はないでしょう。

そして忘れてはならないのが、内蔵ストロボの存在です。GR III以降は小型化、携帯性のために内蔵ストロボが省かれましたが、GR IIにはポップアップのフラッシュが備わっています。これはストリートで意外な武器になります。逆光で顔が暗く沈んだときに軽く光を足したり、近距離の被写体に“不躾な”直接光を当てることで生々しい質感を暴露したり。ストロボが内蔵されているからこその表現というのがあるのです。

GR IIIよりもボタンの数が多く、カメラらしい“いじりがい”があるのも特徴。スピード感ではGR IIIやGRⅣに一歩譲りますが、立ち止まって構図をじっくり決めるスナップには逆に向いている部分もあります。中古市場で、ある程度価格が落ち着いてきているので、まずGR体験をしてみたい人にとって、GR IIは非常に現実的な選択肢かもしれません。


GRⅣを待つ理由と、その先にあるもの

もちろん、GRⅣが手元に来るのを待つのも良いでしょう。新レンズによる自然な描写、像面位相差AFのスピード感、そして28mmで実現した5軸6段分の手ブレ補正。これらは数字以上に、撮影に“安心感”をもたらすでしょう。

また、内蔵メモリが大幅に増えたことで、カードを忘れても撮れる安心感があるのも魅力的です。ポケットに忍ばせる日常機だからこそ、“フェールセーフ”的なこういった機能の存在は実用性に大きく貢献するでしょう。


LX100 II──もうひとつの“答え”

そして番外編として紹介したいのが、Panasonic LX100 II
こちらはマイクロフォーサーズのセンサーを採用し、ズームレンズ(24–75mm相当)を搭載。GRの「単焦点で割り切る潔さ」とは対照的に、街から旅行、ちょっとした動画撮影まで、幅広く対応できる万能機です。GRと比べると大きいですが、軍艦部のダイヤルやリングでの直感的な操作性の楽しめる機種でもあります。動画性能にも優れ、写真と共に“スナップムービー“を撮るのにも向きます。

GR的な「ポケットから一瞬で構えてシャッター」という軽快さはありませんが、けれど、ズームの自由度と動画性能を重視する人にとっては、この選択も一つの正解になるかもしれません。“ライカ銘”のレンズを備えているのも、もちろん大きな魅力です。


どのカメラを選ぶか——“待つ”時間の意味

GRⅣをすぐに手に入れるのが難しい状況です。だからといって、手に入るのをただ待つだけではもったいありません。GR IIIはすでに十分な完成度を備え、今でもストリートの第一線で十分通用する機種です。GR IIは内蔵ストロボを備え、あの時代の雰囲気をまとった柔らかな写りを見せてくれます。そして、少し視点を変えれば、LX100 IIのような選択肢もある。

結局のところ、どんなカメラを選んでも重要なのは“街に出て撮影をする”行為そのものです。新しいカメラを待つワクワクする時間も、もちろん楽しい時間ではありますが、GRⅣを手にできるその日まで、手をこまねいているのは得策ではありません。

 


SnapThreads-Tokyo は、東京を中心に日常の瞬間を切り取り、Tシャツやプリントとして届けるプロジェクトです。街を歩き、出会った景色をあなたの日常へ。

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